大東町花菜油の会
私たちが生産地を訪れるきっかけは、全国初の試み、大豆を使用しない「エゴマ醤油」づくりでした。その原材料であるエゴマは胡麻ではなくシソ科の植物。一関市大東町では、昔から各家々で栽培されてきた食材です。
7年前、取引先から「大豆アレルギーのため、醤油を使った給食を食べられない子が増えている」と聞き、当社では様々な原材料を使った醤油づくりに取り組みはじめました。そして、大豆に替わるヒエやアワなど数々の素材を試す過程で、岩手県工業技術センターから紹介されたのが一関市大東町の生産団体「花菜油の会」だったのです。
「花菜油の会」は、地元の農家55人が会員となって、農薬や化学肥料を使わないナタネ油やエゴマ油の生産販売を行ってきました。昔から畑で栽培した菜の花で自家製ナタネ油を作る家々も多かったという大東町の人々。同会は、それを町の特産物にしようと遊休農地を活用して菜の花を育て、昔ながらの方法でナタネ油を生産、加工、販売しています。と同時に白種エゴマよりも搾油率の高い国産黒種エゴマを普及し良質のエゴマ油も生産。ナタネ同様、大東町では各農家がエゴマを栽培し自家用に食してきました。
畑を見るとわかりますが、エゴマはシソ科の植物。発がん性物質の抑制、免疫力向上、花粉症やアトピーなどのアレルギー対策や高血圧予防にも効果が期待される、αリノレン酸が50~60%も含まれております。食べると十年長生きすると言われており、大東町周辺では「じゅうねん」という呼び名も。餅用のタレやあえ物などに使われる身近な食材です。
10月初旬、人間の胸元あたりまで成長したエゴマはそろそろ収穫期。エゴマの実はパラパラと畑にこぼれ落ちやすく、収穫が遅れると収量が減ってしまう為、短期間でタイミングよく刈り取らないといけません。刈り取った後はしっかりと乾燥させ、脱穀して種を取ります。煉瓦づくりの釜で薪を使って丁寧に焙煎し、昔ながらの圧搾製法でつくる艶やかなエゴマ油は栄養たっぷり。その搾りかすを醤油の原材料に使うのですが、これまでは家畜飼料に使われる程度でした。エゴマ醤油は大豆アレルギーの子ども達が安心して食べられる醤油として作ったものですが、栄養価を十分に含むエゴマの搾りかすを有効に活かしたエコな調味料とも言えます。
「花菜油の会」は当社にとって原材料の産地としてだけではなく圧搾までの加工を任せられる大事なパートナー。地域資源循環型農業をめざし、手間をかけても化学肥料や農薬を使わない栽培に徹しています。「花菜油の会」と共同で取り組んだエゴマ醤油は2年がかりで商品化にこぎつけ、今では数々のエゴマ商品が誕生。さらに、エゴマ醤油づくりで知り合った大東町の生産者とのつながりは、菜の花と棚田の見学や棚田の田植えツアーへと結びつき、畑をより身近に感じる場を生み出しています。